見積書の計算ミスをAIで検出する検証
金額・消費税の検算とプロンプト
見積書や請求書の「数量×単価」「小計」「消費税」「合計」。この計算が合っているかのチェックは、地味だけど神経を使う作業です。生成AIに検算させられたら助かりますが、AI(大規模言語モデル)は実は計算が得意とは限りません。そこで、わざと計算ミスを仕込んだ見積書を作り、AIが見つけられるか・正しい箇所を誤って指摘しないかを検証しました。
検証方法
5明細の見積書を作り、2か所に誤りを仕込みました。①C機材の金額(3,000×2=6,000のはずが6,500)②消費税(小計27,950の10%=2,795のはずが2,759)。これをAIに「計算が合っているか確認して」と渡しました。
| 品目 | 単価 | 数量 | 金額 |
|---|---|---|---|
| A 業務委託 | 1,200 | 3 | 3,600 |
| B 保守 | 850 | 5 | 4,250 |
| C 機材 | 3,000 | 2 | 6,500 |
| D ライセンス | 480 | 10 | 4,800 |
| E 初期設定 | 2,200 | 4 | 8,800 |
| 小計 | 27,950 | ||
| 消費税(10%) | 2,759 | ||
| 合計 | 30,709 |
結果:2つのミスを検出+連動修正
| 箇所 | 記載 | 正しい値 | 判定 |
|---|---|---|---|
| C機材 金額 | 6,500 | 6,000(3,000×2) | 誤り |
| 消費税 | 2,759 | 2,795(27,950×10%) | 誤り |
| A・B・D・E 金額 | 各記載値 | 一致 | 正しい |
さらにAIは、「C機材を6,000に直すと、小計は27,450、消費税は2,745、合計は30,195が正しい」と、誤りを直した場合の連動した正しい金額まで示しました。正しい4明細を「間違い」と誤指摘することもありませんでした。
わかったこと
- 数量×単価の検算ができる。行ごとの金額の誤りを特定できた。
- 税・合計の検算もできる。小計×税率の不一致を見つけた。
- 連動した正しい値を出せる。1か所直すと全体がどう変わるかまで示せた。
給与明細の合計欄に仕込んだ500円の食い違いをAIが見つけられるかは給与明細をAIで表に起こして検算させる精度検証で確かめています。
誤りが出た行の計算式と、人が検算する順番
この見積書で誤りがあった2か所を、「正しい計算式」と「書かれていた誤った金額」で並べます。AIの回答は、人が同じ順で確かめるときの基準にもなります。
| 箇所 | 正しい計算式 | 正しい金額 | 書かれていた金額 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| C機材 金額 | 3,000×2 | 6,000 | 6,500 | +500 |
| 消費税 | 27,950×10% | 2,795 | 2,759 | -36 |
C機材を6,000に直すと連動して変わる欄は次のとおりです。
| 欄 | 計算式 | 直した後の金額 | 直す前の記載 |
|---|---|---|---|
| 小計 | 3,600+4,250+6,000+4,800+8,800 | 27,450 | 27,950 |
| 消費税(10%) | 27,450×10% | 2,745 | 2,759 |
| 合計 | 27,450+2,745 | 30,195 | 30,709 |
人が検算するときは、上から下へ順に確かめると、どこで食い違ったかを見失いません。
- 明細1行ごとに「単価×数量」を計算し、金額欄と比べる。ここで食い違った行(この例ではC機材)に印を付けます。
- 印を付けた行を直した値で、明細の金額を足し直し、小計と比べる。誤りのある行があると、小計も食い違います。
- 直した小計に税率を掛け、消費税の欄と比べる。端数の扱いが書類にあれば、それに従います。
- 直した小計と消費税を足し、合計の欄と比べる。
検算で確かめる計算は、足し算・割合・端数の3種類に分けられます。この見積書の数字で並べます。
| 種類 | 確かめること | この見積書での計算 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 足し算 | 明細の金額を足して小計と合うか | 3,600+4,250+6,000+4,800+8,800 | 27,450円(直す前の記載は27,950円で、500円の差) |
| 割合 | 小計に税率を掛けて消費税と合うか | 27,450×10% | 2,745円(直す前の記載は2,759円) |
| 端数 | 1円未満が出たとき、書類の決まりで切り捨て・四捨五入・切り上げのどれにするか | 27,450×10%は2,745.0円で、端数は出ない | この見積書では端数の扱いは結果に影響しない |
小計と合計は、上の行の誤りがそのまま下へ伝わります。そのため、下の欄だけを見て「小計が合わない」と判断せず、先に明細の行を確かめるのが近道です。
見積書・請求書の検算プロンプト(コピーして使えます)
ChatGPT・Gemini・Claudeなどのチャットに、見積書の画像や明細と一緒に貼り付けて使う形です。当社が結果を確かめたのはClaudeだけで、ChatGPT・Geminiでの結果は検証していません。
次の見積書の計算が合っているかを確認してください。 手順: 1. 明細を1行ずつ書き出し、「単価×数量」を計算して、記載の金額と比べる 2. 明細の金額を足して、記載の小計と比べる 3. 小計×税率を計算して、記載の消費税と比べる(端数の扱いが書かれていれば従う) 4. 小計+消費税を計算して、記載の合計と比べる 出力:確認した行ごとの表(記載の値/計算した値/一致・不一致) 不一致があれば、それを直した場合の小計・消費税・合計も出す。 最後に、表計算ソフトで同じ確認ができるよう、各行の計算式(例:=B2*C2)を付けてください。 [ここに見積書を貼り付け]
2026年9月の再確認(Claude Opus 5.5)
上のプロンプトで、この記事の見積書をもう一度確認させました。
- 誤り2か所(C機材の6,500円、消費税の2,759円)を、6月と同じく検出しました。
- 記載の小計27,950円は、明細の足し算としては合っていると判定しました。C機材の誤った6,500円をそのまま足した結果のためで、「小計の足し算は正しいが、元の明細が誤り」と切り分けています。
- 直した場合の値(小計27,450円・消費税2,745円・合計30,195円)も同じでした。
答えを知っている同じサンプルでの再確認なので、初めて見る見積書での精度を示すものではありません。
使うときのコツ
- 手順を順番に書かせる。いきなり「合っているか」と聞くより、行ごとの計算を書き出させた方が、どこで食い違ったかを追えます。
- 計算式を出させて、表計算で再計算する。AIは計算そのものを間違えることがあります。金額の最終確認は、必ず正確に計算できる道具で行います。
- 端数の扱いを書き添える。消費税の切り捨て・四捨五入の違いで1円ずれることがあり、誤りと区別できるようにしておきます。
まとめ
見積書の計算チェックは、AIが誤りの“あたり”をつけるのに有効でした。ただし最終的な金額の正しさは、決定的に計算できる仕組みで担保すべきです。「AIで怪しい箇所を洗い出し→計算ツールで確定」という組み合わせが、実務では一番安全で速い形になります。レシートの画像で、合計や8%の税額に入れた誤りをAIが指摘できたかはレシートの記載の矛盾をAIで点検する検証で確かめました。様式の違う3社の見積書を、税込・税抜をそろえて比較表にできるかは相見積もりの見積書3社をAIで比較表にする精度検証で確かめました。
よくある質問
AIに見積書や請求書の検算を任せられますか?
仕込んだ計算ミスの検出はでき、直した場合の正しい合計まで提示できました。ただしLLM自体の計算は万能ではなく、明細が増えたり桁が大きくなると足し算・掛け算でAIが間違えることがあります。
AIの検算結果はそのまま信用してよいですか?
重要な金額は鵜呑みにせず、表計算ソフトやプログラムなど「必ず正確に計算できる仕組み」で再計算して突き合わせるのが安全です。AIは「どこを確認すべきか」のあたりをつける用途が向いています。
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)が2026年6月に実施した一次検証です。2026年9月25日に、同じサンプルをClaude(Opus 5.5)で再確認し、使ったプロンプトと結果を追記しました。マルチモーダル生成AI(Claudeを使用)に実際のサンプルを処理させ、結果を自社で記録しました。当社は「今日の一皿」「LLM News」「資格問題ドリル」などのAIプロダクトを自社開発・本番運用しています。会社の詳細はトップページをご覧ください。
検証の進め方は実測の進め方をご覧ください。
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