書き方と実測

賃金台帳の見方

労働日数・時間外・支給額・控除額をAIで確認した実測・プロンプト

結論(先に)賃金台帳は、会社が従業員一人ずつ、賃金を払うたびに記入する帳簿です(労働基準法第108条)。何を記入するかは、労働基準法施行規則第54条が、氏名、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数、賃金の種類ごとの額、控除額などと定めています。3か月分の賃金台帳の記載(架空)をAIに確認表にさせた当社の検証(各条件1回)では、月、時間数、金額の取り違えは4条件とも0件でした。差がついたのは書き足しです。ただ頼んだOpus 5.5とHaikuは、記載に無い割増の単価の逆算と保険料の確認を足して6/7、プロンプトありの2条件は書き足さず7/7でした。

賃金台帳に記入する事項と、読むときの要点

労働基準法第108条は、使用者(会社)に、事業場ごとに賃金台帳を作り、賃金の計算の基礎になる事項と賃金の額などを、賃金を払うたびに遅れずに記入するよう求めています(e-Gov法令検索、2026年10月20日に確認)。記入する事項は、労働基準法施行規則第54条第1項が労働者一人ずつについて8つ挙げています。

号記入する事項(施行規則第54条第1項)
1氏名
2性別
3賃金計算期間
4労働日数
5労働時間数
6時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合の、延長時間数・休日労働時間数・深夜労働時間数
7基本給、手当その他賃金の種類ごとの額
8賃金の一部を控除した場合の、その額

同じ条文には、記入しなくてよい場合も書かれています。日々雇い入れる労働者(1か月を超えて続けて使う人を除く)は賃金計算期間を、労働基準法第41条各号に当たる労働者と第41条の2に当たる労働者は労働時間数と時間外などの時間数を、記入しなくてかまいません。

この記事の検証で使った記載は、この8事項を3か月分並べた架空のものです。会社が実際に使う様式は、会社ごとに違います。読むときの要点は3つです。

  • 時間外・休日・深夜の時間数を別々に読む。時間外労働は法定の労働時間を超えた分、休日労働は休日に働いた分、深夜労働は原則として午後10時から午前5時までの分で、別の欄に書かれます。混ぜると手当の額と合わなくなります。
  • 支給と控除を分け、差引支給額を確かめる。差引支給額は、支給額の合計から控除額の合計を引いた額です。控除を支給に足すと、合計が大きくずれます。
  • 月ごとの期間を確かめる。賃金計算期間が月の途中で切れる会社もあります。どの期間の台帳かを、数字と一緒に写します。

この記事のサンプルは、労働時間数を「時間外・休日・深夜の労働時間を含む総労働時間」として、台帳の冒頭にそう書いています。実際の台帳で、労働時間数に何を含めるかは、会社の様式で確かめてください。また、この記事の実測は、書かれた内容を確認表にまとめる部分だけです。賃金の計算が正しいか、法令に合っているかは、この記事では確かめていません。給与明細の読み取りは給与明細をAIで表に起こして検算させる精度検証で扱っています。

AIに賃金台帳を確認させたときの実測

架空の賃金台帳の記載(3か月分)を文章にしたものを、答えを知らない状態のClaude(Opus 5.5/軽くて速いHaiku)に、「月ごとの労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数、支給額、控除額、差引支給額を、提出前の確認用に表にまとめてください。」とだけ頼む条件と、下のプロンプトを使う条件の4通りで、1回ずつ確認表にさせました(2026年10月20日)。記載には、7月・8月・9月の3か月分を入れ、8月には休日労働1日、9月には財形貯蓄の控除を入れています。時間外・休日・深夜の手当は月ごとに額が違い、3か月の合計欄も付けました。

【賃金台帳(3か月分)の記載内容(架空。実在の会社・個人とは関係がない)】

事業場:架空商事株式会社 みどり営業所  労働者:氏名 森田 美咲(モリタ ミサキ) 性別:女
労働時間数は、時間外・休日・深夜の労働時間を含む総労働時間です。深夜労働時間数は、時間外または通常の労働時間の内数です。

■令和8年7月分
 賃金計算期間:令和8年7月1日から令和8年7月31日まで 支払日:令和8年8月25日
 労働日数:22日 労働時間数:194時間
 時間外労働時間数:18時間 休日労働時間数:0時間 深夜労働時間数:2時間
 基本給:250,000円 役職手当:20,000円 時間外手当:33,750円 休日労働手当:0円 深夜手当:750円 通勤手当:12,000円
 支給額の合計:316,500円
 健康保険料:15,400円 厚生年金保険料:27,450円 雇用保険料:1,900円 所得税:7,300円 住民税:14,500円 財形貯蓄:0円
 控除額の合計:66,550円
 差引支給額:249,950円

■令和8年8月分
 賃金計算期間:令和8年8月1日から令和8年8月31日まで 支払日:令和8年9月25日
 労働日数:22日(うち休日労働1日) 労働時間数:182時間
 時間外労働時間数:6時間 休日労働時間数:8時間 深夜労働時間数:0時間
 基本給:250,000円 役職手当:20,000円 時間外手当:11,250円 休日労働手当:16,200円 深夜手当:0円 通勤手当:12,000円
 支給額の合計:309,450円
 健康保険料:15,400円 厚生年金保険料:27,450円 雇用保険料:1,850円 所得税:6,800円 住民税:14,500円 財形貯蓄:0円
 控除額の合計:66,000円
 差引支給額:243,450円

■令和8年9月分
 賃金計算期間:令和8年9月1日から令和8年9月30日まで 支払日:令和8年10月25日
 労働日数:20日 労働時間数:184時間
 時間外労働時間数:24時間 休日労働時間数:0時間 深夜労働時間数:4時間
 基本給:250,000円 役職手当:20,000円 時間外手当:45,000円 休日労働手当:0円 深夜手当:1,500円 通勤手当:12,000円
 支給額の合計:328,500円
 健康保険料:15,400円 厚生年金保険料:27,450円 雇用保険料:1,970円 所得税:8,100円 住民税:14,500円 財形貯蓄:10,000円
 控除額の合計:77,420円
 差引支給額:251,080円

■3か月の合計
 労働日数:64日 時間外労働時間数:48時間 休日労働時間数:8時間 深夜労働時間数:6時間
 支給額の合計:954,450円 控除額の合計:209,970円 差引支給額:744,480円

採点は7項目です。①氏名・性別・3か月の賃金計算期間 ②労働日数と労働時間数 ③時間外・休日・深夜の時間数 ④支給額の内訳と合計 ⑤控除額の内訳と合計 ⑥差引支給額と3か月の合計 ⑦記載に無い判断・助言を足さない。表の見出しや記載の言い換え、合計の足し算の確認は書き足しに数えていません。また、載せなかった項目は×にせず、誤りだけを×にしました(正解表の×の条件による)。載せなかった項目を×に数えると、Opus・ただ頼んだは5/7、Haiku・ただ頼んだは3/7です。

条件7項目時間数・金額の様子記載に無い書き足し
Opus 5.5・ただ頼んだだけ6 / 7月、時間外・休日・深夜の時間数、支給と控除の内訳と合計、差引支給額は記載どおり(性別は載せなかった)。3か月の合計欄に、記載に無い項目別の合計と総労働時間の合計(560時間)を足し算で出して加え、「記載なし。各月を足した値」と断った(足し算の確認として⑦には数えていない)あり。時間外手当・休日労働手当・深夜手当の1時間あたりの単価(1,875円・2,025円・375円)を逆算し、「基本給と役職手当の計27万円を180時間で割った額」1,500円の1.25倍・1.35倍・0.25倍にあたると書いた。割増の計算に使う時間数は就業規則か賃金規程で確かめるよう勧め、雇用保険料と所得税が料率表・税額表に合うかの確認も勧めた。1日8時間と置いて総労働時間を内訳に分けた(8時間は台帳に無い)
Opus 5.5・プロンプトあり7 / 7項目の種類ごとに5つの表に分け(月は列)、時間外・休日・深夜の時間数、支給と控除の内訳と合計、差引支給額、3か月の合計を記載どおりに書いた。支給・控除・差引・3か月の合計の足し算を、行を足して示したなし。末尾は「食い違いは見つかりませんでした。」
Haiku・ただ頼んだだけ6 / 7月、時間数、支給額、控除額、差引支給額は記載どおり。賃金計算期間と内訳の金額の行は載せず、合計だけの表にした。記載に無い総労働時間の合計(560時間)を、足し算で出した値と断らずに表へ載せた(値は各月の合計と合う)あり。割増の1時間あたりの単価(1,875円・2,025円・375円)を逆算して基本の時間単価1,500円の1.25倍・1.35倍・0.25倍と合うと書き、雇用保険料を「支給額の0.6%」と置いて、8月は約7円、9月は1円の差があるとして「要確認」とした(0.6%は台帳に無い料率で、令和8年度の雇用保険料率と合うかは当社では確認していない)
Haiku・プロンプトあり7 / 7月、時間数、金額を記載どおりに書いた。台帳に無い3か月分の労働時間数の合計と項目別の合計は、「記載なし」と書いた。足し算の確認を箇条書きで示したなし
  • 月、時間数、金額の取り違えは、4条件とも0件。8月の休日労働8時間を時間外に混ぜたものも、財形貯蓄を9月以外に書いたものもありません(Haiku・ただ頼んだは内訳の行を載せていません)。
  • 差がついたのは書き足し。ただ頼んだ2条件は、記載に無い単価の逆算と、保険料の確認を足しました。プロンプトあり2条件は足さず、7/7になったのはこの2条件でした。
  • 記載に無い合計を、足し算で出した回答があった。ただ頼んだ2条件は、3か月の合計欄に台帳に無い総労働時間の合計(560時間)を載せました。値は各月の足し算と合いますが、台帳の記載ではありません。Opus・ただ頼んだは足し算で出した値と断り、Haiku・ただ頼んだは断っていません。プロンプトあり2条件は、記載に無い合計を「記載なし」としたか、載せませんでした。
  • 雇用保険料の「要確認」は、記載から出る話ではない。Haiku・ただ頼んだは、台帳に無い料率0.6%を置いて、記載の額との差を挙げました。台帳に書かれているのは額だけで、料率も端数処理も書かれていません。
  • プロンプトの効果は、1回の結果では言えない。ただ、「記載に無い事柄は書かない」と「合計欄は内訳の足し算でも確かめる」のルールを付けた2条件は、どちらも書き足しませんでした。ただ頼んだ2条件は、どちらも書き足しました。
  • 送る前に突き合わせる箇所は、時間数と金額。AIは文章にした記載を読んでいます。帳簿の原本の数字と合っているかは、人が確かめてください。画像やPDFの賃金台帳は試していません。
この検証の範囲:賃金台帳3か月分の記載1つで、各条件1回ずつの結果です。会社・人物・金額はすべて当社が作った架空のもので、実在のものとは関係ありません。実在の会社の様式そのものではなく、文章にした記載を読ませたもので、画像やPDFは試していません。同じ条件で繰り返すと結果が変わることがあり、精度を保証する数字ではありません。ChatGPT・Gemini・Sonnetでは試していません。

賃金台帳の確認用プロンプト(コピーして使えます)

上の検証で「プロンプトあり」に使ったものと同じです(検証では、このプロンプトの前に「ツールは一切使わず、次の依頼への回答だけを返してください。前置きや作業の説明は不要です。」の2文を添えています)。

次の賃金台帳の記載内容から、月ごとの労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数、支給額、控除額、差引支給額を、提出前の確認用に表にまとめてください。次のルールを守ってください。
1. 月ごとに分け、賃金計算期間を添える。月や期間を取り違えない。
2. 時間外・休日・深夜の労働時間数は別々に書く。取り違えない。
3. 支給額と控除額は内訳を記載のとおりに写し、合計欄は内訳の足し算でも確かめる。支給と控除を取り違えない。差引支給額と3か月の合計も記載のとおりに書く。
4. 氏名・性別は記載のとおりに写す。
5. 記載に無い事柄は書かない。

[ここに賃金台帳の記載内容を貼り付け]

使うときのコツ

  • 時間外・休日・深夜を別々に書かせる。この検証は別々に書くよう求め、4条件とも取り違えませんでした。
  • 記載に無い合計の扱いを決めておく。台帳に無い合計を足し算で出されると、台帳の記載と区別がつきません。必要なら「台帳に無い合計は書かない」「出した場合は計算した値と書く」のどちらかを加えてください。
  • 書き足しを止めたいときは、書かないものを名指しする。この検証では「記載に無い事柄は書かない」を付けた2条件が書き足しませんでしたが、1回の結果です。割増の単価や保険料率の確認など、止めたいものを挙げて試してください。
  • 原本の数字との突き合わせは人が行う。AIが読むのは貼り付けた文章です。

よくある質問

賃金台帳には、何を記入しますか?

労働基準法施行規則第54条第1項は、氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数、基本給・手当などの賃金の種類ごとの額、賃金の一部を控除した場合はその額を、労働者各人別に記入するよう定めています。労働者の区分によっては、記入しなくてよい事項もあります。

AIに賃金台帳を読ませると、時間数や金額を間違えますか?

当社の検証(架空の賃金台帳3か月分の記載、各条件1回)では、Claude Opus 5.5・Haikuとも、月、時間外・休日・深夜の時間数、支給額、控除額、差引支給額は4条件で記載どおりでした。差がついたのは書き足しで、ただ頼んだ2条件は割増の単価の逆算や保険料の確認を足して6/7、プロンプトありの2条件は書き足さず7/7でした。1条件1回の結果です。送る前に、時間数と金額を原本と人が突き合わせてください。

このページについて
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。賃金台帳に記入する事項は、労働基準法第108条と労働基準法施行規則第54条(e-Gov法令検索、2026年10月20日確認)によります。AIの検証は2026年10月20日に行いました。検証の作り方は検証・編集・AI利用方針をご覧ください。

書類の読み取りと金額の突き合わせをAIで行う仕組みづくりのご相談

合同会社フューチャープロンプトは、証明書や帳簿の記載を読み取って確認表にし、金額・日付が元の書類と合っているかを確かめる手順まで含めた仕組みづくりをご一緒します。

お問い合わせ →