書き方と実測

退去時の原状回復費用の精算書をAIに読ませる検証

借主の負担額と敷金の返還額の取り違えの実測・プロンプト

結論(先に)退去時の原状回復費用の精算書(架空・敷金150,000円・8項目)をAIに読ませ、借主の負担額と敷金の返還額の取り違えを調べました。Opus 5.5とHaiku 4.5を、ただ頼んだ条件とプロンプトありの条件で試した4条件は、借主負担の合計84,800円と返還額65,200円を、すべて正しく出しました。差が出たのは書き足しで、ただ頼んだ2条件だけが、精算書に無い計算や評価を足しました。

退去時の精算書で取り違えやすいところ

退去時の精算書は、修繕や清掃の項目ごとに、貸主と借主のどちらが払うかが決まっていて、借主の負担分を預けた敷金から引いた残りが返ってきます。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、原状回復を借りた当時の状態に戻すことではないとし、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は賃料に含まれるものとしています。また、借主の負担については、建物や設備の経過年数が長いほど負担割合を減らす考え方をとっています。精算書を読むときは、次の点を見ます。

  • 負担区分:項目ごとに、借主負担か貸主負担かです。貸主負担の項目を敷金から引いてはいけません。
  • 借主負担割合:全額ではなく、経過年数を考慮した割合(例:10%)が書かれている項目があります。
  • 特約:契約書の特約でクリーニング費用などを借主が負担する項目です。
  • 未払いの賃料・管理費:修繕とは別に、敷金から差し引かれることがあります。

契約書そのものの要点は賃貸借契約書の要点(解約予告・原状回復・特約)の抜き出しで、契約前の重要事項説明書の要約は賃貸の重要事項説明書をAIに要約させる検証で調べています。この記事は、退去後に届く精算書の読み取りと計算を対象にしています。請求が妥当かどうかは、調べていません。

AIに精算書を読ませたときの実測

下の精算書(架空)を、答えを知らない状態のClaude(Opus 5.5/軽くて速いHaiku 4.5)に、「次の退去時の原状回復費用の精算書を読んで、借りる人が負担する金額と、敷金の返還額をまとめてください。」とだけ頼む条件と、下のプロンプトを付ける条件で読ませました。4条件です。

退去時の原状回復費用 精算書(賃貸住宅)

作成日:2026年10月20日
貸主:みなと不動産管理 株式会社(架空)
物件:ハイツみなと台 302号室(みなと市みなと台2丁目5番8号・架空)
借主:(架空)
入居日:2019年4月1日
退去日:2026年9月30日(入居期間 7年6か月)
預かり敷金:150,000円
賃料:月額75,000円
管理費:月額5,000円

【修繕・清掃の項目】金額は税込。借主負担割合は、建物・設備の経過年数を考慮したあとの割合。

1. 居室クロス張替え(喫煙によるヤニ汚れ)
   数量 45平方メートル × 単価 1,000円 = 45,000円
   負担区分:借主、借主負担割合:10%(経過年数7年を考慮)

2. 台所フローリング補修(家具の引きずりによる傷、1か所)
   一式 28,000円
   負担区分:借主、借主負担割合:100%

3. 畳表替え(日焼けによる変色)
   数量 6枚 × 単価 4,500円 = 27,000円
   負担区分:貸主、借主負担割合:0%

4. エアコン内部洗浄(通常の使用による汚れ)
   一式 12,000円
   負担区分:貸主、借主負担割合:0%

5. 浴室ドアのパッキン交換(換気を怠ったことによるカビ)
   一式 8,800円
   負担区分:借主、借主負担割合:100%

6. 鍵交換
   一式 16,500円
   負担区分:貸主、借主負担割合:0%

7. ハウスクリーニング(契約書の特約による)
   一式 38,500円
   負担区分:借主、借主負担割合:100%

【賃料等の精算】

8. 2026年9月分の管理費(未払い)
   5,000円
   負担区分:借主、借主負担割合:100%

【返還】
敷金の返還は、上の借主負担額を差し引いた残額を、2026年10月31日までに、別紙の指定口座へ振り込む。

精算書には、取り違えやすい場所を入れました。45,000円の全額ではなく10%だけが借主負担のクロス、貸主負担の3項目(畳表替え・エアコン内部洗浄・鍵交換)、特約のクリーニング、未払いの管理費です。

採点は8項目です。①敷金の返還額(65,200円) ②借主負担の合計(84,800円) ③クロスの借主負担(4,500円) ④貸主負担の3項目を借主の負担に入れない ⑤フローリング補修(28,000円) ⑥特約のクリーニングとカビのパッキン交換が借主負担 ⑦未払いの管理費を差し引く ⑧精算書に無い金額・日付・法律上の評価を足していない。結果は次のとおりです。

条件8項目読み取りと計算書き足し・注
Opus 5.5・ただ頼んだだけ7 / 8返還額65,200円、借主負担の合計84,800円、クロス4,500円、貸主負担3項目を除外、フローリング28,000円、特約とカビ、未払い管理費5,000円がすべて正解「クロス張替えの残り90%(40,500円)も貸主が負担します」と、精算書に無い計算と断定を足した。特約の記載を契約書で確認する助言も足した
Opus 5.5・プロンプトあり8 / 8同じ項目がすべて正解。項目ごとに負担区分・金額・割合の表と、計算式を付けた新しい数字や評価は無し
Haiku 4.5・ただ頼んだだけ7 / 8同じ項目がすべて正解ガイドラインの耐用年数への言及、フローリングが「高めに見えます」という評価、特約が無効なら返還額は「103,700円」に増えるという計算、4項目の確認の助言を足した
Haiku 4.5・プロンプトあり8 / 8同じ項目がすべて正解。項目ごとの表と計算式を付けた新しい数字や評価は無し
  • 読み取りと計算の間違いは、4条件とも0件だった。返還額、借主負担の合計、クロスの10%、貸主負担3項目の除外は、どの条件でも正しく、Haiku 4.5も計算を間違えませんでした。
  • 差が出たのは、書き足しだった。Opus 5.5(ただ頼んだだけ)は「残り90%(40,500円)も貸主が負担します」と、精算書に書かれていない負担の振り分けを断定し、特約の記載を契約書で確かめるよう勧める助言も足しました。Haiku 4.5(ただ頼んだだけ)は、ガイドラインへの言及、「高めに見えます」という評価、「103,700円」という別の返還額を足しました。そのまま使うと、精算書に無い判断が混ざります。
  • プロンプトありの2条件は、書き足さなかった。書かれていない事柄を書き足さないというルール(ルール5)を入れた条件では、どちらも8項目すべて正解でした。1条件ずつの結果なので、プロンプトの効果とは言い切れません。
この検証の範囲:項目が8つの架空の精算書1つで、各条件1回ずつの結果です。精算書と正解は当社が作ったものです。同じ条件で繰り返すと結果が変わることがあり、項目がもっと多い実際の精算書で同じになるとは限りません。ChatGPT・Gemini・Sonnetは試していません。画像やPDFの精算書も試していません。

退去時の精算書の読み取りのプロンプト(コピーして使えます)

上の検証で「プロンプトあり」に使ったものと同じです(検証では、このプロンプトの前に「ツールは一切使わず、次の依頼への回答だけを返してください。前置きや作業の説明は不要です。」の2文を添えています)。

次の退去時の原状回復費用の精算書を読んで、借りる人(借主)の負担額と敷金の返還額をまとめてください。ルールは次の5つです。
1. 金額・割合・日付は、精算書のとおりに書く。数字を変えたり丸めたりしない。
2. 項目ごとに、負担区分(借主か貸主か)、金額、借主負担割合を表にし、借主が負担する金額を書く。
3. 貸主負担の項目は、借主の負担額にも、敷金からの差し引きにも入れない。
4. 借主負担の合計と、敷金から合計を引いた返還額を、計算式つきで書く。
5. 精算書に書かれていない事柄(法律上の評価、請求が妥当かどうかの判断、助言)は、書き足さない。

[ここに精算書を貼り付け]

使うときのコツ

  • 貸主負担の項目の扱いを書く。「貸主負担の項目は敷金からの差し引きに入れない」と明記しておきます。今回は指定の無い条件でも取り違えなかったため、この一文の効果は確かめられていません。
  • 計算式つきで出させる。合計と返還額を式で出させると、手元の精算書と見比べて検算できます。
  • 「書き足さない」を入れる。今回、書き足したのは、プロンプト(ルール1〜5)を付けなかった2条件だけでした。
  • 結果は精算書と見比べる。AIの整理は、精算書の代わりにはなりません。請求の内容に疑問があるときは、契約書とガイドラインを確かめます。

まとめ

退去時の精算書を読ませると、Opus 5.5・Haiku 4.5ともに、借主負担の合計と敷金の返還額を間違えませんでした。差が出たのは書き足しで、プロンプトを付けなかった2条件だけが、精算書に無い負担の振り分けや評価、別の返還額を足しました。見る場所は、AIの整理の中の、精算書に無い数字と判断です。

よくある質問

退去時の精算書をAIに読ませると、敷金の返還額を間違えませんか。

この検証では、Opus 5.5とHaiku 4.5のどちらも、4条件すべてで、借主負担の合計84,800円と敷金の返還額65,200円を正しく出しました。貸主負担の3項目(合計55,500円)を借主の負担に入れた条件も、クロスの10%を100%にした条件もありませんでした。ただし各条件1回の結果で、8項目の架空の精算書です。実際の精算書で同じになるとは限りません。

AIは、精算書に無いことを書き足しますか。

この検証では、ただ頼んだ2条件が書き足しました。Opus 5.5は「クロス張替えの残り90%(40,500円)も貸主が負担します」と書き、特約の記載を契約書で確かめるよう助言し、Haiku 4.5は国土交通省のガイドラインへの言及、「高めに見えます」という評価、特約が無効だった場合の返還額「103,700円」などを足しました。プロンプトありの2条件は、書き足しませんでした。

精算書の負担区分や金額が妥当かどうかも、AIで確かめられますか。

この検証では、精算書に書かれた負担区分と割合のとおりに計算できるかを見ただけで、請求が妥当かどうかは調べていません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、原状回復を借りた当時の状態に戻すことではないとし、借主が負担すべき損耗でも、経過年数が長いほど借主の負担割合を減らす考え方を示しています。個別の請求の可否は、契約書とあわせて判断します。

この精算書の会社や物件は実在しますか。

いいえ。貸主・物件・住所・金額・日付はすべて当社が作った架空のものです。

このページについて
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。AIの検証は2026年10月15日に行いました。検証の作り方は検証・編集・AI利用方針をご覧ください。

精算書や明細の読み取りをAIで行う仕組みづくりのご相談

精算書や明細を読み取り、確認が必要な箇所を人に渡す流れの設計をご相談いただけます。

お問い合わせ →