ヒヤリハット報告書・事故報告書の違いと下書き
原因・再発防止策の書き足しの実測とプロンプト
ヒヤリハット報告書と事故報告書の違い
| 見るところ | ヒヤリハット報告書 | 事故報告書 |
|---|---|---|
| 対象 | けがや損害に至らなかった「ひやっとした」出来事(この記事の例は、フォークリフトの先が歩行者のつま先にかすった場面) | 実際に事故が起きた出来事。人のけが、物の損害、業務への影響など |
| 提出先 | 多くは社内(上司・安全担当)。様式は会社ごとに決める | 社内に加え、労働者が死亡または休業した労働災害は、法令で所轄の労働基準監督署長への報告が決まっている |
| 書く項目 | 日時・場所、関係者、起きたこと、対応、原因、再発防止策(下の表) | 社内様式は会社ごと。労働者死傷病報告は、発生日時・発生場所・発生状況・原因などを書く |
法令の根拠は労働安全衛生規則第97条です。事業者は、労働者が労働災害等により死亡し、または休業したときは、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません(第1項)。報告事項には「労働災害等の発生日時、発生場所の所在地、発生状況及びその略図並びに原因」が含まれます(第1項第11号)。休業が4日に満たないときは、1~3月、4~6月、7~9月、10~12月の期間ごとに、各期間の最後の月の翌月末日までに報告します(第2項。e-Gov法令検索で2026年10月15日に確認)。ヒヤリハットは休業にも死亡にもならない出来事なので、この法定の報告の対象ではありません。
事故報告書そのものをAIに書かせる実測は、まだしていません。以下の実測はヒヤリハット報告書だけの結果で、事故報告書にそのまま当てはまるとは言えません。ただし、事実はメモのとおりに書き、原因と再発防止策が決まっていなければ「調査中」「未定」と書く、という考え方は事故報告書でも同じです。
ヒヤリハット報告書で見る項目
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 日時・場所 | メモの表記のまま書く。曜日など、メモに無い情報は足さない |
| 関係者と役割 | 運転していた人と歩いていた人など、役割を取り違えない |
| 起きたこと | 「かすった」を「接触した」「けがをした」と重く言い換えない |
| 周りの状況 | 荷の状態・床・照明など。本人の話(「見づらかったかも」)は、事実と分けて書く |
| 対応と報告 | いつ、誰に、どう報告したか |
| 原因 | メモに無ければ「調査中」と書く。推測を原因として断定しない |
| 再発防止策 | 決まっていなければ「未定」と書く。新しい対策を、決まったように書かない |
この表は、今回の検証に使った現場メモの項目をまとめたものです。報告書の様式は会社や業界で違います。AIは、メモに書かれたことを報告書の形に整えるだけで、原因を判断するものではありません。
AIでヒヤリハット報告書を書かせたときの実測
架空の現場メモ(倉庫のB通路で、フォークリフトの先が歩行者の左足のつま先にかすった)を、答えを知らない状態のClaude(Opus 5.5/軽くて速いHaiku 4.5)に、「次の現場メモから、ヒヤリハット報告書を書いてください。」とだけ頼む条件と、下のプロンプトを使う条件の4通りで、1回ずつ書かせました(2026年10月13日)。メモには、書き足しが起きやすい点として、原因が「まだ分からない」こと、再発防止が「何も決まっていない」こと、運転者の「前が少し見づらかったかも」という本人の話を入れています。
ヒヤリハットの現場メモ(架空・担当者が書いたままの文面) 2026年10月9日 14時10分ごろ 第2倉庫 B通路 フォークリフト2号機を運転していた佐藤さんと、歩いて通路を横切った鈴木さんが接触しそうになった。 フォークの先が鈴木さんの左足のつま先にかすった。鈴木さん本人は「かすっただけ」と言っている。痛みなし、あざなし、歩くのも普通。受診はしていない。 そのときの荷はパレット2段積みで、佐藤さんは「前が少し見づらかったかも」と言っていた。 床は乾いていた。通路の照明はいつもどおり。 作業はその場でいったん止めて、14時40分に班長の田中さんに口頭で報告した。 原因はまだ分からない。これから調べる。 再発防止は何も決まっていない。10月16日の安全衛生委員会で話す予定。
採点は8項目です。①日時(2026年10月9日14時10分ごろ)と場所(第2倉庫B通路) ②運転者が佐藤さん、歩行者が鈴木さん ③接触の程度(フォークの先が左足のつま先にかすった。痛み・あざなし、受診なし)を重くも軽くもしない ④荷(パレット2段積み)と床・照明の状態が合い、「見づらかったかも」を事実として断定しない ⑤対応(作業をいったん止めた)と報告(14時40分、班長の田中さんへ口頭) ⑥原因を「調査中」とし、メモに無い原因を断定しない ⑦再発防止策を「未定。10月16日の安全衛生委員会で話す予定」とし、メモに無い対策を書かない ⑧そのほか、メモに無い数字・人・分類・責任を書き足さない。報告書の見出しは、書き足しに数えていません。
| 条件 | 8項目 | 原因・再発防止策の書き方 | ×の内容 |
|---|---|---|---|
| Opus 5.5・プロンプトあり | 8 / 8 | 原因は「調査中(原因はまだ分からない。これから調べる)」、再発防止策は「未定(…10月16日の安全衛生委員会で話す予定)」。佐藤さんの「前が少し見づらかったかも」は「本人の話」の節に分けた | なし |
| Opus 5.5・ただ頼んだだけ | 8 / 8 | 原因は「まだ分かっていません。これから調べます。」、再発防止策は「まだ決まっていません。10月16日の安全衛生委員会で話し合う予定です。」。末尾に、メモに書かれていない項目を「書いていない」と列挙した | なし |
| Haiku 4.5・プロンプトあり | 8 / 8 | 原因は「調査中」、再発防止策は「未定」。末尾に、聞き取りの予定を立てるよう勧める「次の一手」を付けた | なし(「次の一手」は、メモに無い数字・分類・責任に当たらないため数えていない) |
| Haiku 4.5・ただ頼んだだけ | 6 / 8 | 原因は「未特定。現在調査中。」、再発防止策は「未決定」。そのうえで「未確認事項」の節と「次の一手」の節を足した | 日付に「(金)」と曜日を足した。「再発防止の案(歩行者の通行ルート、2段積み時の前方確認の方法など)」と、メモに無い対策の方向を書いた |
- 原因のメモに無い断定は、4条件とも0件だった。「前が少し見づらかったかも」は、4条件とも佐藤さんの話として書かれ、原因とは書かれませんでした。
- 役割の取り違えと、けがを重くする言い換えは、0件だった。運転者は佐藤さん、歩行者は鈴木さんで、「かすった」「痛みなし」「受診はしていない」が4条件とも残りました。
- プロンプトなしのHaikuだけが、2項目で書き足した。1つ目は、日付の「(金)」です。2026年10月9日が金曜日なのは暦のとおりですが、メモにはありません。2つ目は、「次の一手」の中の「再発防止の案(歩行者の通行ルート、2段積み時の前方確認の方法など)」です。具体的な対策ではなく検討の方向ですが、再発防止策が「何も決まっていない」メモに、方向を書き足しています。この判定は分かれ得ます。
- 「次の一手」を付けたのは、Haikuの2条件だった。プロンプトありの条件は、聞き取りの予定を立てるよう勧める一文でした。メモに無い数字・分類・責任ではないため、書き足しに数えていません。
- メモに書かれていない項目を、「書いていない」と断ったのは、Opus・ただ頼んだ条件だった。報告書の作成者、報告した人の名前などを列挙しましたが、事実の書き足しはありませんでした。
ヒヤリハット報告書を書かせるプロンプト(コピーして使えます)
上の検証で「プロンプトあり」に使ったものと同じです(検証では、このプロンプトの前に「ツールは一切使わず、次の依頼への回答だけを返してください。前置きや作業の説明は不要です。」の2文を添えています)。
次の現場メモから、ヒヤリハット報告書を書いてください。次のルールを守ってください。 1. メモに書いてある事実だけで書く。日時・場所・人名・数字は、メモのとおりに一字違わず書く。 2. 運転していた人と歩いていた人の役割を取り違えない。メモの言葉を、重くも軽くも言い換えない。 3. 原因と再発防止策がメモに無い、または決まっていないときは、「調査中」「未定」と書き、推測した原因や新しい対策は書かない。本人の話は「本人の話」と分けて書く。 4. メモに無い数字・分類・責任の所在は書かない。 [ここに現場メモを貼り付け]
使うときのコツ
- 原因と再発防止策が決まっていないときの書き方を、指定する。「調査中」「未定」と書くよう頼んだ2条件は、メモに無い原因や対策を書きませんでした。
- 本人の話は、事実と分けるよう頼む。「見づらかったかも」は、4条件とも原因と書かれませんでしたが、断定を防ぐ指示として残しておくと安心です。
- 日時・人名・数字は、メモのとおりに書くよう頼む。プロンプトなしのHaikuは、メモに無い曜日を足しました。
- 「次の一手」や助言が要らないときは、書かないよう頼む。この検証のプロンプトは、助言を禁じていません。Haikuの2条件が「次の一手」を付けています。
- 報告書は、現場の確認を経てから出す。AIは、メモの事実を整えるだけで、原因や対策を判断するものではありません。
よくある質問
ヒヤリハット報告書には、何を書けばよいですか?
日時・場所、関係者と役割、起きたこと、周りの状況、対応と報告、原因、再発防止策を書きます。原因や再発防止策が決まっていなければ、「調査中」「未定」と書き、推測を決まったように書きません。報告書の様式は会社や業界で違います。
AIにヒヤリハット報告書を書かせると、原因や再発防止策を書き足しますか?
当社の検証(各条件1回)では、Claude Opus 5.5・Haiku 4.5とも、メモに無い原因の断定は4条件とも0件でした。プロンプトなしのHaikuだけが、メモに無い曜日と、再発防止策の方向を書き足しました。現場メモは文章で渡しており、実際の現場の報告書は試していません。
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。AIの検証は2026年10月13日に行いました。検証の作り方は検証・編集・AI利用方針をご覧ください。
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