労働条件通知書の記載項目と要点の抜き出し
賃金・就業時間・更新条件をAIで抜き出したときの書き足しの実測・プロンプト
労働条件通知書に書く項目
労働基準法施行規則第5条は、会社が働く人に明示しなければならない労働条件を定めています(e-Gov法令検索で確認、2026年10月11日)。主なものは次のとおりです(すべてではありません)。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 契約期間・更新 | 契約期間。期間の定めがある契約を更新する場合があるときは、更新の基準。更新の回数や通算期間に上限があるときは、その上限 |
| 就業の場所・業務 | 働く場所と仕事の内容。それぞれ将来変わる範囲 |
| 就業時間 | 始業・終業の時刻、所定時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇 |
| 賃金 | 決め方・計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期、昇給 |
| 退職 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
施行規則第5条は、このほかに、退職手当、賞与、食費などの負担、安全衛生、職業訓練、表彰や制裁、休職についても、定めがある場合の明示事項に挙げています。このうち契約期間・更新の基準・就業の場所と業務・就業時間・賃金(昇給を除く)・退職は、書面の交付が原則です。働く人が希望した場合は、ファクシミリや、書面に出力できる電子メールなどでもよいとされています。
賃金欄を最低賃金と照らす手順
賃金欄を抜き出したあとは、法定の下限である地域別最低賃金と照らします。最低賃金法第4条は、最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約はその部分が無効になり、最低賃金と同じ定めをしたものとみなすと定めています(e-Gov法令検索で確認、2026年10月15日)。
- 働く場所の都道府県の額と発効日を、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確かめる。令和8年度は、東京が1,280円(令和8年10月1日発効)、大阪が1,231円(同日発効)、全国加重平均が1,177円です。発効日は都道府県ごとに違い、岩手・熊本は令和8年12月1日です(厚生労働省、確認日2026年10月15日)。
- 月給や日給は、時間額に換算してから比べる。最低賃金法施行規則第2条は、月給をその月の所定労働時間数(月によって違うときは年間の1か月平均)で割った額で比べると定めています。たとえば月給25万円で月の所定労働時間が160時間なら、250,000÷160=1,562.5円です(架空の計算例)。
- 比べる賃金に入れないものを除く。臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、所定時間外・休日・深夜の割増部分は算入しません(同規則第1条)。
AIに抜き出させた賃金の数字をこの比較に使うときは、月の所定労働時間と手当の内訳が通知書の原文どおりかを、先に確かめてください。この節の額と発効日は厚生労働省の一覧から転記したもので、AIの実測ではありません。
AIで労働条件通知書の要点を抜き出したときの実測
下の架空の通知書(パートタイム・期間の定めあり・時間給)を、答えを知らない状態のClaude(Opus 5.5/軽くて速いHaiku 4.5)に、「賃金・就業時間・更新条件の要点を抜き出して一覧にしてください」とだけ頼む条件と、下のプロンプトを使う条件の4通りで、1回ずつ抜き出させました(2026年10月11日)。通知書には、更新は「する場合がある」で判断の材料が決まっていること、通算4年の上限があること、昇給・賞与・退職金がいずれも「なし」であること、社会保険は雇用保険だけ加入することを入れています。
労働条件通知書(架空・パートタイム、期間の定めあり) 2026年4月1日 伊藤 花子 殿 事業所名 有限会社みどり食品(東京都〇〇区、架空) 使用者職氏名 代表取締役 山下 健 1 契約期間:期間の定めあり(2026年4月1日~2027年3月31日) 2 契約の更新:契約期間満了時に更新する場合がある。更新するかどうかは、契約期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況により判断する。通算契約期間は最長4年(2030年3月31日まで)とし、これを超える更新はしない。 3 就業の場所:本社工場(東京都〇〇区)。変更の範囲:会社の定める事業所(東京都内) 4 従事すべき業務:食品の仕分け・包装。変更の範囲:会社の定める業務 5 始業・終業の時刻:始業 9時00分、終業 15時00分。休憩時間 45分(12時00分~12時45分) 6 所定時間外労働:あり(月平均5時間程度)。休日労働:なし 7 休日:毎週日曜日、土曜日、国民の祝日(週休2日。シフト表により土曜出勤の週は別の平日を休日とする) 8 休暇:年次有給休暇は法定どおり。その他の休暇:夏季休暇 3日(無給) 9 賃金:時間給 1,250円。通勤手当は実費、月額上限 8,000円。割増賃金率:所定時間外 25%、休日 35% 10 賃金の締切日と支払日:毎月末日締め、翌月15日払い。昇給:なし。賞与:なし。退職金:なし 11 退職に関する事項:自己都合退職は退職の14日前までに申し出ること。解雇の事由は就業規則第40条による。 12 社会保険:厚生年金・健康保険は加入しない。雇用保険は加入する。 以上
採点は7項目です。①賃金(時間給1,250円、通勤手当の上限8,000円) ②就業時間(9時~15時、休憩45分) ③更新は「する場合がある」で、判断の材料が書かれている ④通算4年(2030年3月31日まで)の上限を落とさない ⑤昇給・賞与・退職金の「なし」を取り違えない ⑥社会保険の加入を取り違えない ⑦通知書に無い事項・計算・評価を足さない。表の見出しや「通知書の記載どおり」のような前置きは、書き足しに数えていません。
| 条件 | 7項目 | 賃金・就業時間・更新条件の抜き出し | メモに無い書き足し |
|---|---|---|---|
| Opus 5.5・プロンプトあり | 7 / 7 | 時間給1,250円、通勤手当の上限8,000円、9時~15時と休憩45分、更新の判断材料と通算4年の上限まで、原文どおり | なし |
| Opus 5.5・ただ頼んだだけ | 6 / 7(⑦×) | 数字・上限・「なし」はすべて原文どおり | あり。「実働時間(計算値)」として「1日 5時間15分」、無期転換申込権の説明、休日35%と休日労働「なし」の食い違いの指摘 |
| Haiku 4.5・プロンプトあり | 7 / 7 | 賃金・就業時間・更新条件とも原文のとおり。昇給・賞与・退職金は「なし」と書いた | なし |
| Haiku 4.5・ただ頼んだだけ | 6 / 7(⑦×) | 数字・上限・「なし」はすべて原文どおり | あり。「所定労働時間は1日5時間15分と読み取れる」、書き方への指摘、社会保険の加入要件を確かめたほうがよいという助言 |
- 金額・時刻・更新の条件は、4条件とも原文のとおりだった。時間給、通勤手当の上限、割増率、9時~15時と休憩45分、更新の判断材料、通算4年の上限に、取り違えた条件はありませんでした。昇給・賞与・退職金が「なし」であることも、すべての条件が書いていました。
- ただ頼んだだけの2条件は、通知書に無い1日5時間15分という計算を書いた。Opus 5.5は「実働時間(計算値)」、Haiku 4.5は「所定労働時間は1日5時間15分と読み取れる」と書きました。9時から15時までの6時間から休憩45分を引いた値で、計算は合っていますが、通知書にはその数字がありません。この検証では書き足しとして数えました。
- ただ頼んだだけの2条件は、抜き出しのほかに評価や助言も付けた。Opus 5.5は、無期転換申込権の説明と、休日割増率と「休日労働なし」の食い違いの指摘を付けました。Haiku 4.5は、休日の書き方、休日割増率、社会保険の加入要件について、確かめるとよいと書きました。当社は、これらAIが書いた説明の中身は確かめていません。
- プロンプトを渡した2条件は、書き足しがなかった。「通知書に無い事項・計算・評価は足さない」と入れた条件では、一覧が通知書の記載の写しになりました。各1回の結果なので、プロンプトの効果とまでは言えません。
労働条件通知書の要点を抜き出すプロンプト(コピーして使えます)
上の検証で「プロンプトあり」に使ったものと同じです。
次の労働条件通知書から、賃金・就業時間・更新条件の要点を抜き出して一覧にしてください。 ルール: - 通知書に書いてあることだけを、数字・日付は原文のとおりに書く - 「なし」と書いてある項目も落とさず、そのとおりに書く - 通知書に無い事項・計算・評価は足さない [ここに通知書を貼り付け]
使うときのコツ
- 抜き出した数字は原本と見比べる。金額・時刻・日付は、通知書の原本と1つずつ照らしてから使います。
- 通知書に無い数字が混じっていないか読む。月収の試算や労働時間の計算は、AIが足しやすいものです。必要なら別に頼みます。
- 抜き出す項目を指定する。「賃金・就業時間・更新条件」のように範囲を決めると、頼んでいない項目を増やしにくくなります。
よくある質問
労働条件通知書には何を書きますか?
契約期間、期間の定めがある契約の更新の基準(更新に上限があるときはその上限)、就業の場所と業務、始業・終業の時刻や休憩・休日、賃金の決め方と支払い、退職に関する事項などです。労働基準法施行規則第5条に定められています。
AIに労働条件通知書の要点を抜き出させると、間違えますか?
当社の検証(各条件1回)では、Claude Opus 5.5・Haiku 4.5とも、金額・時刻・更新の上限を取り違えませんでした。ただ頼んだだけの2条件は、通知書に無い労働時間の計算や評価を書き足しました。プロンプトで「計算・評価は足さない」と頼んだ条件は、書き足しがありませんでした。
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。AIの検証は2026年10月11日に行いました。検証の作り方は検証・編集・AI利用方針をご覧ください。
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