訂正印・取り消し線で直した納品確認書の写真をAIで読み取る精度検証
納品日・数量・合計金額で、訂正前の値を採用しないか
手書きの納品書や確認書は、数量や金額を間違えると、線を引いて書き直し、訂正印を押します。この書類をAIに読ませるときに困るのは、線で消した古い値を拾ってしまうことです。合計金額が古い値のままなら、請求や在庫の数字がそのままずれます。そこで、訂正の入った書類を、答えを知らないAIに読ませて確かめました。
検証方法
当社で、納品確認書を模した書類を3枚作成しました。会社名・品名・金額はすべて架空で、実在の会社や取引とは関係ありません。手書き風フォントで作った画像で、実際の手書きではありません。どの書類も、納品日・ある品名の数量・合計金額の3か所が書き直されています。訂正後の数量に合わせて、明細の金額は最初から合う値にしてあります。
- サンプルA:古い値に線を引き、訂正後の値を小さく書いた(数量と合計金額は古い値の上、納品日は古い値の左隣)。訂正印は無い。納品日は10月3日を10月8日に、ボルトM8の数量は30を50に、合計金額は9,400を11,000に直してある。
- サンプルB:古い値に線を引き、訂正後の値を右隣に書いて、赤い丸の訂正印を押した。納品日は11月12日を11月21日に、養生テープの数量は24を42に、合計金額は9,780を11,940に直してある。
- サンプルC:古い値に細い線を引くだけで、訂正後の値は表の下の欄外の文にだけ書いた(訂正印は欄外の文の末尾。納品日の横にも「(欄外に訂正)」と書いてある)。納品日は12月5日を12月15日に、ビニール袋の数量は100を150に、合計金額は4,200を4,800に直してある。
取り消しの線は、二重線を指定して描いたつもりでしたが、できあがった画像では太い一本線に見えました。そのため、この記事では「取り消し線」と呼びます。画像の下の注記には、Aに「古い値に線を引いてあります」、Bに「古い値に線を引き、赤い訂正印を押してあります」、Cに「古い値に線を引き、訂正後の値を欄外に書いてあります」と書いてあり、この条件での結果です。



答えを知らないClaude(Opus 5.5・Haiku 4.5)に、下のプロンプトと、画像を開く手順だけを渡し、画像1枚ずつを別々に読み取らせました(3枚×2モデルの計6条件、各1回)。プロンプトには「訂正されている項目は、訂正後の値を採用してください」と書いてあります。採点は、各書類の3項目について、訂正後の値を採用していれば○、訂正前の値または別の値なら×としました。回答に訂正前の値の書き添えがあっても、訂正後を採用していれば○とし、書き添えは別に数えました。
結果:訂正後の値を採用したか
| 条件 | 3項目の採用 | 訂正前の値の書き添え |
|---|---|---|
| Opus 5.5・A | 3項目とも訂正後(○) | なし(元の値ははっきりとは読めないとして採用せず) |
| Haiku 4.5・A | 3項目とも訂正後(○) | 説明の文に3項目とも書いた(10月3日・30・9,400円) |
| Opus 5.5・B | 3項目とも訂正後(○) | 説明の文に数量と合計だけ書いた(24・9,780)。古い納品日は確実には読めないとした |
| Haiku 4.5・B | 3項目とも訂正後(○) | 表の中に数量の古い値「24」を書いた。古い納品日は読めないとした |
| Opus 5.5・C | 3項目とも訂正後(○) | 表に「訂正前の値」の列を設け、3項目とも書いた |
| Haiku 4.5・C | 3項目とも訂正後(○) | 表の値の欄に、3項目とも「訂正前は…」と書き添えた |
訂正後の値に対するAIの回答の原文(サンプルC・欄外のみ)
表の中には線しか無く、訂正後の値は欄外の文にだけあるサンプルCについて、保存した回答の原文を並べました(各条件1回)。
| 項目 | Opus 5.5 | Haiku 4.5 |
|---|---|---|
| 納品日 | 「12月15日」(訂正前の値の列は「12月5日」) | 「12月15日(欄外の訂正後の値。訂正前は12月5日)」 |
| ビニール袋の数量 | 「150」(訂正前の値の列は「100」) | 「150(欄外の訂正後の値。訂正前は100)」 |
| 合計金額 | 「4,800円」(訂正前の値の列は「4,200円」) | 「4,800円(欄外の訂正後の値。訂正前は4,200円)」 |
わかったこと
- 6回とも、訂正前の値を採用した例は0件だった。日付(10月3日と10月8日など)、2桁の数量(24と42)、4〜5桁の金額(9,780と11,940)を、2モデルとも訂正後で返しました。
- 赤い訂正印の有無は、この検証では結果を分けなかった。印の無いA、印のあるB、欄外の文の末尾に印があるCのどれも、全項目が訂正後でした。
- 訂正後の値が欄外にだけある書類でも、欄外の値を使った。Cでは、表の中の「100」「4,200」に線が引かれ、明細の金額には訂正後の数量に合う値が入っていました。2モデルとも、欄外の文の値を採用し、明細との計算が合うことも回答に書きました。
- 採用は正しくても、訂正前の値が回答に混ざることがあった。6条件のうち5条件で、訂正前の値を回答のどこかに書きました。表の値の欄の中に書き添えたのはHaiku 4.5のBとCで、ほかは別の列(Opus 5.5のC)や表の外の説明の文でした。そのまま金額の列に取り込むと数値として足し算できなくなるので、取り込む前に回答の形を確かめます。
- この検証で差は出なかった。全項目が正解だったため、2モデルの優劣は言えません。この検証では、訂正後の値を採用する指示と、画像の注記(線を引いてある、欄外に書いてある)という手がかりがありました。指示や注記が無い場合、実際の手書きの二重線や、にじみ・かすれ・斜めの撮影、訂正印が数字に重なる場合は確かめていません。
回答に残った訂正前の値の実例と、人が見直す順番
訂正後の値の読み違いは0件でしたが、取り込み前に直す必要がある書き方が残りました。保存した回答の原文と、見直す順番を並べます。
| 見直す順 | 見る箇所 | 回答の原文の実例 |
|---|---|---|
| 1 | 値の欄に訂正前の値が混ざっていないか | Haiku 4.5・B「42(訂正後。訂正前の「24」に線が引かれ、赤い訂正印があります)」、Haiku 4.5・C「150(欄外の訂正後の値。訂正前は100)」。値の欄がそのままでは数字として取り込めない |
| 2 | 訂正後の値と、明細の計算が合うか | Cでは2モデルとも欄外の値を採用し、明細との計算が合うことを回答に書いた。合わないときは訂正の見落としを疑う |
| 3 | 読めない訂正前の値を採用していないか | Haiku 4.5・Bは「訂正前の日付は線で消されていて読めませんが、採用しません」と書いた。読めないと返した例で、推測で埋めた例は0件 |
全体の確認項目は書類をAIに読ませたあと人が確かめる項目のチェックリストにまとめています。
訂正のある書類の読み取りプロンプト
次のプロンプトは、上の検証で使った依頼文の本体です(品名は書類ごとに差し替えました。実際には、これに画像を開く手順を添えました)。
この納品確認書風の書類の写真から、納品日・ボルトM8の数量・合計金額を、項目名と値の表にしてください。書類の中で訂正されている項目は、訂正後の値を採用してください。読めない項目や自信がない項目は、推測せず「要確認」と書いてください。
使うときのコツ
- 「訂正後の値を採用する」と書く。検証ではこの一文を入れました。入れない場合にどうなるかは試していません。
- 読ませる項目を、項目名で指定する。検証では3項目を名前で挙げました。項目を指定せずに頼んだ場合は試していません。
- 訂正前の値は、別の列に分けて出させる。検証では、訂正前の値が表の値の欄に混ざったHaiku 4.5のBとCの回答がありました。「値は訂正後の数字だけ、訂正前は別の列」と形を指定すると、取り込みやすくなると考えられますが、この指定は試していません。
- 明細の計算と合うかを確かめる。検証の回答では、数量×単価と合計が合うことを自分で確かめた例が多く見られました。計算が合わないときは、訂正の見落としを疑って元の書類を見ます。
まとめ
訂正のある納品確認書は、この検証ではOpus 5.5・Haiku 4.5のどちらも、線で消した古い値を採用せず、訂正印の有無や、訂正後の値が欄外にだけある場合でも、納品日・数量・合計金額を訂正後の値で返しました。一方で、回答に訂正前の値が混ざる例がありました。訂正後を採用する指示と画像の注記がある、きれいな画像での結果です。実際の手書きの書類で同じ結果になるかは確かめていません。
よくある質問
訂正印と取り消し線で直した書類をAIに読ませると、訂正前の値を採用しますか。
この検証では、架空の納品確認書3枚(各3項目)を、訂正後の値を採用するよう指示して読ませたところ、Opus 5.5とHaiku 4.5のどちらも、6条件・18項目すべてで訂正後の値を採用しました。訂正前の値を採用した例は0件です。ただし各条件1回で、きれいな画像と、訂正後を採用する指示つきの結果です。
訂正後の値が表の中に無く、欄外にだけ書いてある書類でも、AIは訂正後の値を読めますか。
この検証では、表の中の数量と合計金額には線だけが引かれ、訂正後の値が欄外の文にだけある書類でも、2モデルとも納品日・数量・合計金額の3項目を欄外の値で返しました。欄外の文は「納品日は12月15日、ビニール袋の数量は150、合計金額は4,800に訂正します」と書いた条件です。
AIの回答に訂正前の値が混ざることはありますか。
この検証では、採用した値は正しくても、回答に訂正前の値を書き添えた例がありました。表の中に書き添えたのはOpus 5.5のC(訂正前の値の列)、Haiku 4.5のB・C(値の欄の中)で、表の外の説明の文に書いたのはHaiku 4.5のAとOpus 5.5のBです。金額の列に文字が混ざると表計算で足し算できなくなることがあるので、取り込む前に確認が必要です。
この納品確認書は実在するものですか。
いいえ。会社名・品名・金額はすべて当社が作成した架空のデータで、実在の会社や取引とは関係ありません。実在の書類は使っていません。
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。AIの検証は2026年10月11日に行いました。検証の進め方は実測の進め方、方針は検証・編集・AI利用方針をご覧ください。