ビジネスメールを中国語に訳すAIの精度
日付・金額・社名・依頼の強さを保てるかの実測と、中国語訳のプロンプト
日本語のビジネスメールを中国語で送る場面では、訳の自然さを自分で確かめにくいため、「数字と固有名詞だけは崩れていないか」を機械的に見る方法が役に立ちます。このページでは、日本語のメールを中国語にAIで訳させたときに、何が崩れて何が崩れなかったかを、日本語の原文と訳を照らして確かめられる項目に絞って紹介します。中国語の文の自然さや敬意の高さは、当社では評価していません。
AIでビジネスメールを中国語に訳させたときの実測
見積書の再提出を頼む購買担当のメール(架空)を用意しました。件名・宛名・見積番号・金額のほか、依頼2点、期限2つ、含みのある一文を入れています。これを、答えを知らない状態のClaude(Opus 5.5/軽くて速いHaiku 4.5)に1回ずつ訳させました(2026年10月2日)。条件は4通りです。「次の日本語のビジネスメールを、中国語に翻訳してください。」とだけ頼む条件と、下の中国語訳のプロンプトを使う条件を、2つのモデルで試しています。
件名:見積書の再提出のお願い(ミズノワ商事 山岸様) 大成テクノ株式会社 営業部 山岸様 いつも大変お世話になっております。ミズノワ商事の田辺です。 先日は、ご多用のところ打ち合わせのお時間をいただき、誠にありがとうございました。 さて、先日お送りいただいたお見積書(見積番号 Q-2310、合計 1,280,000円・税別)について、恐れ入りますが、次の2点を反映した見積書を再度ご提出いただけませんでしょうか。 ・保守サポートの費用を、年額の別項目として分けて記載してください。 ・納品先が2か所(東京本社と大阪支店)に分かれるため、納品先ごとの数量を明記してください。 社内の決裁の都合上、10月16日(金)までにいただけますと大変助かります。難しい場合は、お手数ですが10月9日(金)までにその旨をお知らせください。 なお、ご提示の単価につきましては、社内で前向きに検討しております。 お忙しいところ恐縮ですが、何とぞよろしくお願い申し上げます。 ミズノワ商事株式会社 購買部 田辺
採点は、原文と訳を並べて照合できる項目だけです。①見積番号 Q-2310 を残す ②金額 1,280,000円(税別)を、桁と税別のまま残す ③期限2つ(10月16日(金)までに再提出、難しければ10月9日(金)までに連絡)の日付・曜日・役割を保つ ④依頼の2点(保守サポート費用を年額の別項目に、納品先2か所ごとの数量の明記)を残す ⑤社名・部署・人名を原文のまま、または同じ名前として保つ(別の社名・部署にすると×) ⑥丁寧な依頼の強さを保つ ⑦「前向きに検討しております」の含みへの対応(プロンプトありの条件だけ採点) ⑧原文に無い約束・数字を足さない。ただ頼んだだけの条件は⑦を採点しないため7項目、プロンプトありは8項目です。
| 条件 | 得点 | 訳の出方(原文の引用) | 書き足し・備考 |
|---|---|---|---|
| Opus 5.5・プロンプトあり | 8 / 8 | 社名は「ミズノワ商事」「大成テクノ株式会社」とカタカナのまま。金額は「1,280,000日元,不含税」、期限は「10月16日(周五)」「10月9日(周五)」 | なし。「前向きに検討」の一覧は2通りの訳(「持积极态度」と「尚未作出决定」)を並べ、本文は「正在积极研究」とどちらにも取れる形にしたと注記 |
| Haiku 4.5・プロンプトあり | 7 / 8 | 「大成テクノ株式会社」は残したが、自社は「水之轮商事股份有限公司」と漢字に直した(項目⑤を×)。金額・期限・見積番号は原文どおり | なし(備考:「期待与您的合作」を足した。一覧の(a)に「有望在近期给出明确答复」とあり、原文に無い時期の見通しを含む) |
| Opus 5.5・ただ頼んだだけ | 6 / 7 | 自社は「水之轮商事」、相手は「大成科技株式会社」と、カタカナの社名を漢字にした(項目⑤を×)。金額・期限・見積番号は原文どおり | なし |
| Haiku 4.5・ただ頼んだだけ | 6 / 7 | 自社は「水之和商事公司」、相手は「大成科技株式会社」(項目⑤を×)。Opus 5.5と同じ「ミズノワ」を、別の漢字(輪と和)にした。金額・期限・見積番号は原文どおり | なし |
- 数字は4条件とも崩れなかった。見積番号、金額、税別(「不含税」「税别」)、2つの期限の日付と曜日(金曜は「周五」または「星期五」)は、4条件すべてで原文と合っていました。依頼の2点も、どの訳にも残りました。
- 差が出たのはカタカナの社名。ただ頼んだだけの2条件は、自社の「ミズノワ商事」を、Opus 5.5が「水之轮商事」、Haiku 4.5が「水之和商事」と、別々の漢字に直しました。原文に漢字の社名は書かれていないため、どちらも訳す側が当てた表記です。取引先の「大成テクノ」も、2条件とも「大成科技」にしました。
- プロンプトに「固有名詞は原文どおりに残す」と書くと、Opus 5.5は直った。Opus 5.5は社名・宛名とも日本語のまま残し、8項目すべてを満たしました。Haiku 4.5は取引先の「大成テクノ株式会社」は残したものの、自社は「水之轮商事股份有限公司」に直しました。同じ指示でも、守る度合いがモデルで違いました。
- 含みのある一文は、本文ではどちらにも取れる形のまま訳された。「前向きに検討しております」は、4条件の本文とも「積極的に考えている・研究している」という意味の語(积极考虑・积极研究・积极审议)になっていて、実際は断る方向であっても、前向きに受け取られるかどうかは判断できません。プロンプトありの2条件は、訳文とは別に、前向きな場合と保留の場合の2通りを一覧にしました。Opus 5.5は「送る前に、実際の意図に合わせて (a) か (b) に差し替えてください」と書き添えました。
- 備考。Haiku 4.5のプロンプトありは、原文に無い「期待与您的合作」(今後の協力に期待します、の意味)を末尾に足し、一覧の(a)にも「有望在近期给出明确答复」(近いうちに明確な返答ができる見込み)という、原文に無い時期の見通しを含めました。採点は変えていませんが、送る前に確かめたい箇所です。原文の「ミズノワ商事の田辺です」という名乗りも、Haiku 4.5のプロンプトありは訳していません。宛名は「大成テクノ株式会社」とカタカナのままなのに、署名は「水之轮商事股份有限公司」と漢字で、表記が混ざっています。部署名の「営業部」は4条件で「营业部」「销售部」「营销部」と揺れました(項目⑤は社名で×のため、得点は変わりません。「营销部」はマーケティング部にも読める語で、部署を保つという正解表の基準では×にあたる可能性があります)。
落ちた箇所の悪い例と直した例
項目⑤で×になった社名を、同じ箇所で並べます。回答の原文からそのまま引いています。
| 箇所 | 悪い例(ただ頼んだ条件) | 直した例(プロンプトを使った条件) |
|---|---|---|
| 自社名「ミズノワ商事」(Opus 5.5) | 「我是水之轮商事的田边」(漢字の社名に変わった) | 「我是ミズノワ商事的田辺」(カタカナのまま) |
| 取引先「大成テクノ株式会社」(Opus 5.5) | 「大成科技株式会社」 | 「大成テクノ株式会社」 |
| 自社名の署名(Haiku 4.5) | 「水之和商事株式会社」 | 「水之轮商事股份有限公司」(プロンプトを使っても漢字に直した。直っていない) |
Opus 5.5は直りましたが、Haiku 4.5は同じプロンプトでも直りませんでした。各条件1回の結果なので、プロンプトを使えば必ず直るという意味ではありません。送る前に、社名が原文のカタカナのままか確かめてください。
英語に訳す場合の実測はビジネスメールをAIで英訳したときの実測にまとめています。英語訳では、含みのある表現とあいさつの直訳が中心の論点でした。中国語訳では、漢字を使う言語であるために、カタカナの社名に漢字が当てられるかどうかが別の論点として出ました。
ビジネスメール中国語訳のプロンプト(コピーして使えます)
このプロンプトは、上の検証で「プロンプトあり」の条件に使ったものと同じです。英訳のプロンプトに、見積番号・金額・日付を原文どおり残す指示を足しています。
次の日本語のビジネスメールを、取引先に送る中国語のメールに翻訳してください。 ルール: - 「いつもお世話になっております」などの決まったあいさつは、直訳せず中国語のビジネスメールで自然な表現にする - 省略された主語(私/当社)を補う - 「前向きに検討します」「検討させていただきます」のように、日本語では含みを持つ表現があれば、訳文とは別に一覧にし、(a) 本当に前向きな場合の訳 (b) 保留の意味合いの場合の訳 を並べる - 固有名詞・製品名・見積番号・金額・日付は原文どおりに残す [ここにメール本文を貼り付け]
使うときのコツ
- カタカナの社名・製品名は、中国語での表記を先に決めて渡す。検証では、決めていないと、AIが漢字を当てました。取引先が使っている中国語名があるなら、それを依頼文に書きます。
- 日付・金額・番号は、訳を原文と並べて照合する。検証では崩れませんでしたが、1通の結果なので、送る前の確認は省けません。
- 含みのある表現は、自分の意図を先に伝える。「前向きに検討」が本当に前向きか保留かを依頼文に1行書くか、一覧で選び直します。
- 中国語としての自然さは、読める人に任せる。このページの検証は、そこを見ていません。
よくある質問
AIでビジネスメールを中国語に訳すと、金額や日付は崩れませんか?
当社の検証(1通の架空のメールで各条件1回)では、Claude Opus 5.5・Haiku 4.5の4条件とも、見積番号・金額(税別)・2つの期限の日付と曜日・依頼の2点は原文どおりでした。崩れたのはカタカナの社名の表記で、AIが漢字を当てた条件がありました。結果は繰り返すと変わることがあるため、送る前に原文と並べて確かめます。
中国語訳でカタカナの社名を原文のまま残すには、どう頼めばよいですか?
依頼文に「固有名詞・製品名は原文どおりに残す」と書くと、当社の検証ではOpus 5.5は社名を日本語のまま残しました。Haiku 4.5は取引先は残しましたが自社を漢字に直したため、確実にするには、取引先が使う中国語表記を決めて依頼文に書きます。
AIの中国語訳で、実際に崩れたのはどんな箇所でしたか?
当社の検証(架空のメール1通、各条件1回)では、崩れたのはカタカナの社名でした。Opus 5.5のただ頼んだ条件は「ミズノワ商事」を「水之轮商事」、「大成テクノ株式会社」を「大成科技株式会社」と漢字に変えました。プロンプトを使った条件では両方カタカナのまま残りましたが、Haiku 4.5は署名でプロンプトを使っても漢字に直し、直りませんでした。
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。AIの検証は2026年10月2日に行いました。検証の進め方は実測の進め方、方針は検証・編集・AI利用方針をご覧ください。
この記事で使ったプロンプトは、ほかの業務書類のものと並べて、業務書類のAIプロンプト集から貼り付けて使えます。
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