英語のビジネスメールを日本語に訳すAIの精度
金額・日付・否定の指示・受け取った側を保てるかの実測・プロンプト
日本語から外国語に訳す場合は、訳した後に自分で正しさを確かめにくいことが問題になります。反対に、届いた英語を日本語に訳す場合は、日本語は読めるので、訳文が自然でも「原文と同じことを言っているか」を確かめる手間が省かれがちです。このページでは、英語のメールを日本語にAIで訳させたときに、何が保たれて何が崩れたかを、英語の原文と照らして確かめられる項目に絞って紹介します。日本語の文の自然さは評価していません。
AIで英語のビジネスメールを日本語に訳させたときの実測
請求書の誤りを知らせるメール(件名・宛名・番号3つ・金額3つ・日付4つ・「支払わないでください」という否定の指示・返事が無いときの扱い・「免除できるかもしれないが約束はできない」という含みのある一文を入れた架空のもの)を、答えを知らない状態のClaude(Opus 5.5/軽くて速いHaiku 4.5)に、「次の英語のビジネスメールを、日本語に翻訳してください。」とだけ頼む条件と、下の英文メール和訳のプロンプトを使う条件の4通りで、1回ずつ訳させました(2026年10月5日)。
Subject: Revised invoice for order A-2093 - please do not pay the original invoice Dear Ms. Yamada, Thank you for your message of October 1. This is Tom Becker from Redwood Parts Inc. We found an error in the original invoice (INV-5530). The correct total for order A-2093 is USD 12,400.00, excluding shipping, not USD 14,200.00. A revised invoice (INV-5530-R) will follow by October 8. Could you please do the following? - Do not release the payment for INV-5530. Please wait for the revised invoice. - Let us know by Friday, October 16 if the delivery address (your Osaka warehouse) is unchanged. If we do not hear from you, we will ship to the address we have on file. The 40% deposit (USD 4,960.00) we received on September 24 will be credited in full. We may be able to waive the shipping fee on a case-by-case basis, but I cannot promise anything at this point. Kind regards, Tom Becker Accounts Receivable Redwood Parts Inc.
採点は、原文と訳を並べて照合できる項目だけです。①注文番号・請求書番号を残す ②金額(正しい合計と誤っていた金額、前払金)がどれのことか変わらない ③4つの日付と、曜日・役割を保つ ④「INV-5530の支払いを行わない」という否定を逆転させない ⑤依頼と、返事が無いときの扱い(登録済みの住所へ発送)を残す ⑥社名・人名を保つ ⑦送料の免除は約束できない、という強さを保つ(プロンプトありの条件だけ採点) ⑧原文に無い約束・数字・依頼を足さない。ただ頼んだだけの条件は⑦を採点しないため7項目、プロンプトありは8項目です。
| 条件 | 得点 | 訳の出方(訳文の引用) | 書き足し・備考 |
|---|---|---|---|
| Opus 5.5・プロンプトあり | 8 / 8 | 番号(INV-5530・INV-5530-R・A-2093)、「USD 12,400.00(送料を除いて)」「USD 14,200.00ではありません」、10月1日・10月8日・10月16日(金)・9月24日が原文どおり。「INV-5530へのお支払いは実行しないでください」と否定が保たれた | なし。送料免除は「状況によっては免除できる可能性もあります。ただし、現時点では何もお約束できません」と確約にしなかった。末尾に「相手が頼んでいること」と、約束の強さの一覧を付けた |
| Haiku 4.5・プロンプトあり | 7 / 8 | 番号・金額・日付・曜日は原文どおり。支払いは「INV-5530の支払いをお控えください」と否定が保たれ、前払金は「ご入金いただいた」と向きも合っていた | 「相手が頼んでいること」の一覧に、原文に無い依頼「改訂請求書を受け取り、USD 12,400.00 に基づいて支払う」を足した(項目⑧を×)。「改訂請求書は10月8日までにお送りする予定です」と、約束をやや弱めた |
| Opus 5.5・ただ頼んだだけ | 7 / 7 | 番号・金額(「12,400.00米ドル」「14,200.00米ドルではありません」「4,960.00米ドル」)・日付・曜日は原文どおり。否定は「INV-5530へのお支払いは実行しないでください」 | なし。送料は「免除できる場合もありますが、現時点ではお約束いたしかねます」と、確約にしなかった |
| Haiku 4.5・ただ頼んだだけ | 6 / 7 | 番号・金額(「USD 12,400.00」「USD 14,200.00」)・曜日は原文どおり。否定は「INV-5530のご支払いはお控えください」。一方、前払金は「9月24日にお受け取りいただいた40%のデポジット」と、受け取った側が宛先に入れ替わった(項目③を×) | 書き足しなし。送料は「確約できかねます」と、確約にしなかった |
- 番号・金額・否定の指示は、4条件とも崩れなかった。注文番号、請求書番号、3つの金額、10月1日・10月8日・10月16日(金)の日付、「INV-5530へのお支払いはしない」という否定は、4条件すべてで原文と合っていました。送料の免除も、4条件とも「約束はできない」という強さのままで、確約にはなりませんでした。
- 崩れたのは「誰が受け取ったか」。Haiku 4.5のただ頼んだだけの条件は、「9月24日にお受け取りいただいた40%のデポジット」と訳しました。原文は、メールの送り手(Redwood Parts)が受け取ったという意味ですが、この訳では宛先の山田様が受け取ったことになります。金額も日付も合っているため、数字だけを確かめても見つかりません。ほかの3条件は、「お受け取りした」「受領した」「ご入金いただいた」と、向きが合っていました。
- 原文に無い依頼が混ざったのは、プロンプトありのHaiku 4.5。プロンプトに「相手が頼んでいること」を一覧にするよう入れたところ、Haiku 4.5は、原文に無い「改訂請求書を受け取り、USD 12,400.00 に基づいて支払う」を、してほしいことに加えました。原文は支払いを頼んでおらず、12,400ドルは送料別で、前払金の差し引きもあるため、支払額としても正確ではありません。一覧を付けさせると、訳文の確認は楽になりますが、一覧そのものが原文と合っているかも確かめる必要があります。
- プロンプトの効果は、否定の確認と一覧の付加。プロンプトありのOpus 5.5は、「相手が頼んでいること」を、しないでほしいこと(INV-5530の支払い)としてほしいこと(改訂版を待つ、10月16日までに納品先を知らせる)に分け、返事が無いときの扱いを例外として書きました。約束の強さの一覧も付き、「will follow by October 8」は確定、「may be able to waive」は可能性のみ、と整理されました。ただ頼んだだけの2条件は一覧が付かず、訳文だけを読んで確認することになります。
- 備考。前払金(deposit)の訳語は、「前払い金」「前払金」「デポジット」と条件で分かれました。Haiku 4.5のプロンプトありは、部署を「売掛金回収部」(原文は Accounts Receivable)とし、「the address we have on file」を「現在のファイルに登録されているアドレス」と訳しました。「will follow by October 8」を「お送りする予定です」と、約束をやや弱めた訳もありました。いずれも採点は変えていません。
取り違えの種類別の件数
上の4条件の採点を、取り違えの種類ごとに数え直した表です。新しく訳させたものではなく、上の4回の結果を並べ替えただけです。
| 取り違えの種類 | 崩れた回数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 番号(注文・請求書) | 0 / 4 | 4条件とも原文どおり |
| 金額(正しい合計・誤っていた金額・前払金) | 0 / 4 | 4条件とも原文どおり |
| 日付・曜日 | 0 / 4 | 4条件とも原文どおり |
| 否定の指示(支払わない) | 0 / 4 | 「実行しないでください」「お控えください」と、4条件とも否定のまま |
| 送料免除の約束の強さ(確約にする) | 0 / 4 | 4条件とも「約束はできない」の強さのまま |
| 誰が受け取ったか(向き) | 1 / 4 | Haiku 4.5・ただ頼んだだけ:前払金の受け取りが宛先側になった |
| 原文に無い依頼の書き足し | 1 / 4 | Haiku 4.5・プロンプトあり:「改訂請求書を受け取り、USD 12,400.00 に基づいて支払う」 |
1通のメールを各条件1回ずつ訳させた結果なので、この件数は精度の割合ではありません。金額・日付・否定が崩れなかったのはこの回の結果で、ほかのメールや別の回で崩れないことは示していません。
逆向きの訳は言語ごとに別の記事があります。英語はビジネスメールをAIで英訳したときの実測、中国語はビジネスメールを中国語に訳すAIの精度、韓国語はビジネスメールを韓国語に訳すAIの精度、ベトナム語はビジネスメールをベトナム語に訳すAIの精度にまとめています。
落ちた箇所の悪い例と直した例
項目③と⑧で×になった箇所を、回答の原文からそのまま引いて並べます。英語の原文は “The 40% deposit (USD 4,960.00) we received on September 24 will be credited in full.” です。
| 箇所 | 悪い例 | 直した例 |
|---|---|---|
| 預り金を受け取った側(Haiku 4.5) | ただ頼んだ条件:「9月24日にお受け取りいただいた40%のデポジット(USD 4,960.00)」(受け取ったのは送り手の会社なのに、宛先側に入れ替わった) | Opus 5.5・プロンプトあり:「9月24日に受領した40%の前払金(USD 4,960.00)」 |
| 相手が頼んでいること(Haiku 4.5・プロンプトあり) | 一覧に「改訂請求書(INV-5530-R)を受け取り、USD 12,400.00 に基づいて支払う」を足した(原文に無い依頼) | この回では直った例が無い。送る前に、一覧が原文の依頼だけか確かめる |
2つ目は直った例がなく、プロンプトを使った回でも書き足しが出ました。各条件1回の結果なので、条件の優劣を言い切れる数ではありません。
英文メール和訳のプロンプト(コピーして使えます)
上の検証で「プロンプトあり」に使ったものと同じです。
取引先から届いた次の英語のビジネスメールを、社内で読むための日本語に翻訳してください。 ルール: - 金額・日付・曜日・番号・社名・人名は原文どおりに残し、日本語に直す場合も数字を変えない - 「Do not 〜」「not」「unless」など否定や例外の表現は、肯定に取り違えていないかを確認し、訳文とは別に「相手が頼んでいること(してほしいこと/しないでほしいこと)」を箇条書きで書く - 「may be able to」「cannot promise」のように、約束の強さが分かれる表現があれば、訳文とは別に一覧にし、原文の強さのまま訳したものを示す - 原文に無い内容(合計の計算、約束、補足)は足さない [ここにメール本文を貼り付け]
使うときのコツ
- 「誰が・誰に」の向きは、訳文を読んだ後に原文と並べて確かめる。検証では、金額も日付も合っているのに、受け取った側が入れ替わった訳が出ました。「受け取った」「払った」「送った」の語に線を引き、原文の主語と照らします。
- 「相手が頼んでいること」の一覧は、原文と見比べる。一覧は読みやすい反面、原文に無い依頼が混ざっても気づきにくくなります。依頼の数が、原文の「Could you please」以下と合っているかを数えます。
- 否定の指示は、訳文と一覧の両方で確かめる。検証では4条件とも取り違えませんでしたが、お金に関わる「払わないでください」の取り違えは損害が大きいため、一覧で確かめる価値があります。
- 約束の強さは、原文の助動詞(will・may・cannot)と訳文を並べる。「予定です」「可能性もあります」など、日本語の語尾で強さが変わるためです。
- 日本語としての自然さは、このページの検証では見ていない。
よくある質問
AIで英語のメールを日本語に訳すと、金額や否定の指示は崩れませんか?
当社の検証(1通の架空のメールで各条件1回)では、Claude Opus 5.5・Haiku 4.5の4条件とも、番号・金額・日付・曜日と、「支払わないでください」という否定の指示は原文どおりでした。崩れたのは、前払金を受け取った側の入れ替え(Haiku 4.5)と、原文に無い依頼を一覧に足したこと(プロンプトありのHaiku 4.5)です。結果は繰り返すと変わることがあるため、訳文を原文と並べて確かめます。
英語のメールの和訳で、誤訳を見つけるにはどこを確かめればよいですか?
金額と日付が合っているかに加えて、誰が何を受け取った・払った・送ったかの向きと、「Do not」などの否定、「may be able to」「cannot promise」などの約束の強さを、原文と訳文で並べます。当社の検証では、金額と日付が合っていても、受け取った側が入れ替わった訳が出ました。
AIの和訳で、実際に崩れたのはどんな箇所でしたか?
当社の検証(架空のメール1通、各条件1回)では、崩れたのは受け取った側と、原文に無い依頼の書き足しでした。Haiku 4.5のただ頼んだ条件は、「お受け取りいただいた40%のデポジット」と訳しました。実際に受け取ったのは送り手の会社なので、受け取った側が宛先に入れ替わっています。Haiku 4.5のプロンプトありは、原文に無い「改訂請求書を受け取り、支払う」という依頼を一覧に足しました。日付と金額の数字そのものは、どの条件でも合っていました。
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。AIの検証は2026年10月5日に行いました。検証の進め方は実測の進め方、方針は検証・編集・AI利用方針をご覧ください。
この記事で使ったプロンプトは、ほかの業務書類のものと並べて、業務書類のAIプロンプト集から貼り付けて使えます。
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