要件定義書の書き方とテンプレート
在庫管理システムの例文つき。打ち合わせメモからAIで下書きしたときの未決事項・数字・設計の書き足しの実測・プロンプト
要件定義書は、システムで何を実現するかを、依頼する側と作る側で合意するための文書です。このページでは、要件定義書を「何を実現したいか」を決める文書、仕様書を「どう作るか」を書く文書として使い分けています。会社によって呼び方は異なるため、提出先の書式がある場合はそれに合わせてください。構成とテンプレートに加えて、AIに書かせたときに未決事項を決めてしまわないか、メモに無い数字や設計を足さないかを確かめた結果を紹介します。
要件定義書に書くこと
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 目的と現状の課題 | 何を何に替えたいか、いま何に困っているか(数字があればそのまま) |
| 利用者と権限 | 使う人と人数、権限の種類。決まっていない権限は「未決定」と書く |
| 機能 | 必須の機能と、範囲に入れるかが決まっていない機能を分ける |
| 既存データの移行 | 移行する件数と、移行前の課題 |
| 性能・利用環境 | 同時に使う人数など、決まっている数字だけ。目標が決まっていなければ「未決定」 |
| 期限と予算 | 稼働させたい時期、予算の上限か見込みか、承認が済んでいるか |
| 範囲外 | 今回やらないこと |
| 確認が必要な事項 | 未決定・未承認の項目を、現状とともに一覧にする |
発注前に要件を整理して取引先に出す提案依頼書から、要件を抜き出す実測は提案依頼書(RFP)の要件抽出に載せています。
要件定義書のテンプレート
件名:○○システムの要件定義書(下書き) 1. 目的と現状の課題 ・ 2. 利用者と権限 ・人数が確定していなければ「未確定」 3. 機能 ・必須の機能: ・範囲に入れるかが決まっていない機能:「未決定」 4. 既存データの移行 ・対象の件数と、移行前の課題 5. 性能・利用環境 ・目標が決まっていない項目は「未決定」(数字を仮置きしない) 6. 期限と予算 ・予算は上限か見込みかを明記。承認が済んでいなければ「未承認」 7. 今回やらないこと(範囲外) ・ 8. 確認が必要な事項(未決定の一覧) ・事項と現状(未決定・未承認など)
AIで下書きしたときの実測
在庫管理システムの打ち合わせメモ(架空)を、答えを知らない状態のClaudeに、「ただ頼む」「下のプロンプトを使う」の2通りで1回ずつ解かせ、正解表と照らし合わせました(2026年10月13日、当社の作業環境から実行)。ツールを使わせないエージェントを、opus(Opus 5.5)・haiku(Haiku 4.5)の指定で起動しています。メモには、決定扱いにされやすい次の点を仕込みました。営業部長の権限、通知メールを範囲に入れるか、スマートフォン対応の要否、応答時間の目標は決まっていないこと、予算は上限を想定しているだけで社長の承認がまだ無いこと、品目コードが統一されていないこと、会計システムとの連携は今回やらないことです。
【打ち合わせメモ(2026年10月8日/営業部・情報システム部)】 ・目的:営業所3か所の在庫管理を、営業所ごとのExcelから、ブラウザで見られる在庫管理システムに替える ・困りごと:在庫の数が営業所ごとのExcelで合わない。月末の棚卸しに2日かかっている ・利用者:営業所の事務担当約15名。権限は「閲覧のみ」と「編集できる」の2種類。営業部長を編集できる側にするかは決まっていない ・機能:入庫・出庫の登録、在庫数の一覧表示、月末の棚卸し用のCSV出力。在庫が発注点を下回ったときの通知メールは「あれば望ましい」が、今回の範囲に入れるかは決まっていない ・既存データ:Excelの在庫データ約2,400品目を移行する。品目コードの付け方が統一されていない ・性能:同時に使うのは最大10人。応答時間の目標は決めていない ・期限と予算:2027年3月末までに稼働させたい。予算は上限300万円を想定しているが、社長の承認はまだ取っていない ・今回やらないこと:会計システムとの連携 ・決まっていないこと:スマートフォン対応の要否、通知メールの扱い、営業部長の権限
採点は正解表の8項目(目的と現状・利用者・機能・通知メール・移行・性能・期限と予算・範囲外と未決)です。これとは別に、メモに無い数字・日付・設計・決定を書き足した数と種類を数えました。
| 条件 | 8項目の得点 | 未決事項の扱い | メモに無い数字・日付・設計の書き足し |
|---|---|---|---|
| Opus 5.5・プロンプトあり | 8 | 正確(「未決定」「未承認」と書き、末尾の表に6件を一覧にした) | なし |
| Opus 5.5・ただ頼んだだけ | 8 | 正確(「未決」「未定」と書き、8章の表に6件を一覧にした) | 数字・日付・設計はなし。メモに無い予定1か所(「次回の打ち合わせで決める」)、影響の推定(未決事項の表の「決まらないと影響すること」欄)、文書の外の助言1つ |
| Haiku 4.5・プロンプトあり | 8 | 正確(「未決定」「未取得」と書き、「確認が必要な事項」に6件を一覧にした) | 数字・設計はなし。文書の外の助言1つ(「次は、確認事項のうち権限と通知メールの扱いを営業部と決めると、機能要件を確定できます。」) |
| Haiku 4.5・ただ頼んだだけ | 8 | 正確(「未決」「未設定」「未取得」と書いた。ただし一覧にしたのは7章の3件で、応答時間と社長の承認は別の章) | 5種類。日付「2026年10月13日」(作成日として付いたもの)、入力項目、権限による制御の行(必須)、「編集できる(入庫・出庫の登録を含む)」という権限の中身、進め方(決め方・見積もり依頼・社長への承認依頼など) |
- 未決事項を決定扱いにした条件は、4条件ともなかった。営業部長の権限・通知メール・スマートフォン対応・応答時間・社長の承認は、どの条件でも「未決」「未定」「未設定」「未承認」「未取得」などと書かれました。Opusの2条件とHaikuのプロンプトあり条件は、品目コードの扱いを含む6件を表や末尾の一覧にまとめ、Haikuのただ頼んだ条件の未決事項の一覧は3件(スマートフォン対応・通知メール・営業部長の権限)でした。応答時間の秒数など、メモに無い数字はどの条件にも出ませんでした。
- メモに無い日付・設計を足したのは、Haikuのただ頼んだ条件だけだった。版の行の「2026年10月13日」はメモに無い日付です。機能の表では、入庫の登録に「品目、数量、日付、営業所を入力して在庫を増やす」と入力項目を書き、「権限による制御」を必須の機能として1行足しています。権限の「編集できる」にも「入庫・出庫の登録を含む」と中身を足しました。メモには、権限が2種類あることだけが書かれていました。
- Opusのただ頼んだ条件は、数字や設計は足さなかったが、予定と影響の推定を足した。「次回の打ち合わせで決める」と書いたのは、メモに無い打ち合わせの予定で、決まったことのように読めます。未決事項の表に作った「決まらないと影響すること」の欄は、メモに無い影響の推定です。
- この検証は、プロンプトの効果を8項目では測れていない。メモが短く、項目名がはっきりしているため、4条件とも8項目は満点でした。差が出たのは書き足しの有無だけで、1回ずつの結果です。
AIの出力の悪い例と直した例(原文のまま)
メモに無い日付・設計・要件を足した出力と、メモにあることだけを書いた出力を、同じ場面で並べます。
| 場面 | メモに無いことを足した例(Haiku 4.5・ただ頼んだだけ) | メモにあることだけを書いた例(Opus 5.5・プロンプトあり) |
|---|---|---|
| 版・日付 | 「版:v0.1(2026年10月13日)」(作成日として付いた日付で、メモにはない) | 版の行はなく、「根拠:2026年10月8日の打ち合わせメモ(営業部・情報システム部)」 |
| 入庫の機能 | 「品目、数量、日付、営業所を入力して在庫を増やす」 | 「入庫の登録」 |
| 権限 | 機能の表に「権限による制御」の行を足し、「閲覧のみの利用者は登録・編集できないようにする」(優先度は「必須」) | 「権限は次の2種類です。」「閲覧のみ」「編集できる」 |
足した例は、承認する側が決まった仕様として読みやすい形になっています。権限による制御は権限が2種類あることから考えられる要件ですが、メモに書かれた要件ではなく、足すかどうかは決める人の判断です。右の列は、メモにある事実だけを書いています。
要件定義書のプロンプト(コピーして使えます)
上の検証で「プロンプトあり」に使ったものと同じです。
次の打ち合わせメモから、要件定義書の下書きを書いてください。守るルールは次の4つです。 1. メモにある数字・日付・人数・品目数・条件は、そのとおりに書く。 2. メモに無い数字(応答時間・稼働率・バックアップ頻度など)、設計(認証方式・使う技術・画面の仕様)、日程、人名・会社名は書かない。 3. メモで「決まっていない」とされていることは、決まったことのように書かず「未決定」と書き、末尾に確認が必要な事項として一覧にする。 4. 「今回やらないこと」は、範囲外として書く。 [ここにメモを貼り付け]
使うときのコツ
- 版の日付や入力項目が増えていないか確かめる。メモにある日付は打ち合わせの日だけ、というように、書類の中の日付をメモと照らします。
- 「未決定」の一覧が消えていないか確かめる。下書きを整えるうちに、未決事項が決定した機能の表に混ざっていないかを見ます。
- 文書の外の助言と、文書の中の進め方を分けて読む。「次回の打ち合わせで決める」のような文が文書の中に入ると、決まった予定として読まれます。
よくある質問
要件定義書には何を書けばよいですか?
目的と現状の課題、利用者と権限、機能(必須と範囲未定を分ける)、既存データの移行、性能・利用環境、期限と予算、今回やらないこと、確認が必要な事項を書きます。決まっていない項目は数字を仮置きせず「未決定」と書き、末尾に一覧にすると、後から決定事項と取り違えられません。
要件定義書と仕様書は何が違いますか?
このページでは、要件定義書を「何を実現したいか」を決める文書、仕様書を「どう作るか」を書く文書として使い分けています。会社によって呼び方は異なるため、提出先の書式がある場合はそれに合わせてください。
AIに要件定義書を書かせると、決まっていないことを決めてしまいますか?
当社の検証(各条件1回)では、Claude Opus・Haikuとも、営業部長の権限、通知メールの扱い、スマートフォン対応、応答時間、社長の承認を決定扱いにしませんでした。一方、ただ頼んだHaikuは、メモに無い日付、入力項目、権限による制御の要件を足しました。
AIが要件定義書に書いた日付や項目は、そのまま使ってよいですか?
そのままでは使わず、メモと照らして確かめてください。当社の検証では、Haikuのただ頼んだ条件が、版の日付や入庫の入力項目をメモに無いまま書きました。承認する側は決まった仕様として読むため、メモに無い日付や設計を足さないよう指示するのが安全です。
要件定義書の下書きをAIに頼むとき、何を指示するとよいですか?
メモにある数字・日付・人数・条件はそのまま書くこと、メモに無い数字・設計・日程・人名は書かないこと、決まっていないことは「未決定」と書いて末尾に一覧にすること、今回やらないことは範囲外として書くこと、の4つを指示します。このページのプロンプトに入れてあります。
合同会社フューチャープロンプト(AIプロダクト開発・業務自動化/東京・渋谷)がまとめました。AIの検証は2026年10月13日に行いました。会社の詳細はトップページをご覧ください。
検証の進め方は実測の進め方をご覧ください。
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